紀州のドンファンの妻・逮捕報道について その2
今回の事件報道を見て、私は、すぐに約20年前の和歌山カレー事件を思い出しました。
1998年7月、和歌山市内の夏祭りの屋台に出されていたカレーに猛毒のヒ素が混入され、4人が死亡、67人がヒ素中毒になりました。
逮捕されたのは、林眞須美被告人で、立件のポイントなったのが、林被告人が一般には流通していない、猛毒のヒ素を所持していたこと、カレーの調理現場で林被告人が一人になる場面があったこと、林被告人は、近所との折り合いが悪く、トラブルが多々あったこと、林被告人しか犯行に及ぶことができなかったという「消去法」で立件したということで、紀州のドンファンの妻事件と類似している点(つまり、直接証拠がなく、間接事実の積み重ねであり、消去法で紀州のドンファンの妻しか考えられない)というものです。
野崎さんは愛犬イブを溺愛し、遺産は全部イブに相続させる旨の遺言書があったことで、須藤容疑者の殺害の動機にもなっていたかもしれません。つまり、自分は、すべてを捨てて野崎さんと結婚し、遺産を自分が全部相続できると考えていたのに、イブが全部相続し、自分は相続できないのではないかと思った可能性があると考えたかもしれません。また、前述のとおり、須藤容疑者が野崎さんに冷たかったことから、再三「離婚する」と言われ、100万円をもらえなくなり、遺産も手にできないことを考えたかもしれません。
しかし、犬はいくら可愛くても財産権の権利義務の主体にはなれないのです。財産権の権利義務は、人しかなれないのです。このことを知っていれば、須藤容疑者は、殺害を考える必要がなかったのです。
もう一つ、相続人には遺留分という権利があり、1年以内に遺留分減殺請求権を行使すれば、自分の相続する権利の半分は確保することができるのです。おそらく須藤容疑者は、上記のことを知らなかったのでしょう。
だから、まず、イブを殺し、(須藤容疑者があると信じていた)イブの相続権を無くそうと考えた可能性もあります。イブの死に方も、もがき苦しみ、今回の野崎さんの死に方と似ていたそうです。
つまり覚せい剤中毒の疑いをもち、警察は、イブの死体を掘り起こし、覚せい剤が検出されないか、調査したようですが、覚せい剤の検出はされなかったようです。
とにかく今回の事件は直接証拠がない事件ですので、有罪にするには相当の困難を伴うことは否定できません。
しかし、同じ和歌山県で、林眞須美被告人も最高裁まで争いましたが、有罪になり、林被告人は死刑になり、現在死刑囚として拘置所にいると聞きます。間接証拠の積み重ねでも有罪にできるとした最高裁の先例があることは、捜査機関にとっても大きな力になることでしょう。
銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清
1998年7月、和歌山市内の夏祭りの屋台に出されていたカレーに猛毒のヒ素が混入され、4人が死亡、67人がヒ素中毒になりました。
逮捕されたのは、林眞須美被告人で、立件のポイントなったのが、林被告人が一般には流通していない、猛毒のヒ素を所持していたこと、カレーの調理現場で林被告人が一人になる場面があったこと、林被告人は、近所との折り合いが悪く、トラブルが多々あったこと、林被告人しか犯行に及ぶことができなかったという「消去法」で立件したということで、紀州のドンファンの妻事件と類似している点(つまり、直接証拠がなく、間接事実の積み重ねであり、消去法で紀州のドンファンの妻しか考えられない)というものです。
野崎さんは愛犬イブを溺愛し、遺産は全部イブに相続させる旨の遺言書があったことで、須藤容疑者の殺害の動機にもなっていたかもしれません。つまり、自分は、すべてを捨てて野崎さんと結婚し、遺産を自分が全部相続できると考えていたのに、イブが全部相続し、自分は相続できないのではないかと思った可能性があると考えたかもしれません。また、前述のとおり、須藤容疑者が野崎さんに冷たかったことから、再三「離婚する」と言われ、100万円をもらえなくなり、遺産も手にできないことを考えたかもしれません。
しかし、犬はいくら可愛くても財産権の権利義務の主体にはなれないのです。財産権の権利義務は、人しかなれないのです。このことを知っていれば、須藤容疑者は、殺害を考える必要がなかったのです。
もう一つ、相続人には遺留分という権利があり、1年以内に遺留分減殺請求権を行使すれば、自分の相続する権利の半分は確保することができるのです。おそらく須藤容疑者は、上記のことを知らなかったのでしょう。
だから、まず、イブを殺し、(須藤容疑者があると信じていた)イブの相続権を無くそうと考えた可能性もあります。イブの死に方も、もがき苦しみ、今回の野崎さんの死に方と似ていたそうです。
つまり覚せい剤中毒の疑いをもち、警察は、イブの死体を掘り起こし、覚せい剤が検出されないか、調査したようですが、覚せい剤の検出はされなかったようです。
とにかく今回の事件は直接証拠がない事件ですので、有罪にするには相当の困難を伴うことは否定できません。
しかし、同じ和歌山県で、林眞須美被告人も最高裁まで争いましたが、有罪になり、林被告人は死刑になり、現在死刑囚として拘置所にいると聞きます。間接証拠の積み重ねでも有罪にできるとした最高裁の先例があることは、捜査機関にとっても大きな力になることでしょう。
銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清
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