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ある居酒屋での話

 私の帰り道の行きつけの居酒屋の話です。
 ご主人と奥様には子供がないそうで、ご主人を含む3人が料理人、そして、奥様と20歳くらいの女性A子さんが客席当番です。
とても温かい雰囲気の店で、毎週1回は通っておりました。「おりました」と過去形ですが、最近はご夫婦が2つほど先の駅から徒歩約10分のところに店を移転されたため、最近はほとんど伺っておりません。

 4年ほど前のことです。私たち夫婦で食事をしていたところ、突然「ガシャーン」と音がしました。食器を落としたような音でした。
 次の瞬間です。「A子ちゃん。大丈夫!!怪我はなかった?」という奥様の声が聞こえました。そのすぐ後に、A子さんの「すみませーん」という、奥様に謝る声が聞こえました。
 私は、何かホッとするような温かい空気を感じました。
 食器を落とした瞬間に、しかもA子さんが謝る前に、奥様が「A子ちゃん。大丈夫!!怪我はなかった?」と叫ばれたことに、奥様の温かい人柄を感じたのです。
 そんなとき、「何をやってるの!もっと気をつけなさい!」と叱りつける雇い主も多いことでしょう。むしろ、それが通常かもしれませんが、客席にも気まずい空気が流れたことでしょう。
 しかし、食器を壊されたことよりも、従業員の怪我を心配する、このことに私は感動を覚え、爽やかな気持ちで店を後にすることができたのです。

  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)
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